皆さんこんにちは!
今日は、私の備忘録もかねてソーシャルワークにおける様々な援助モデルについてご紹介いたします。
このようなモデル等が必ずしも今日のソーシャルワークに当てはめることができ訳ではありませんが、さまざな視点からクライエントを見ることに必ず役立つと思います。
過去にも紹介しているのもありますが、今回はとにかく沢山種類を挙げてみることを目指します!
実践モデルとは、積み重ねた実践の結晶です
相談援助の対象となるのは個人、家族、グループ、地域など様々な主体が考えられます。
これらが円滑的な関係を構築しシステムの要素が互いに作用し合い、循環している関係を目指すことが支援展開として想定されます。
実践モデルとは、このような支援展開の経験から有効とみなされているもの、方法の望ましさ、適切さが評価されているものということになります。
実践モデルの歴史
相談援助の実践モデルは本当に多様です。「慈善から科学へ」を目指したリッチモンドに始まり、診断派、機能派、それらを統合したパールマンが提唱する問題解決アプローチなど、これ以降も様々な実践モデルが生み出されてきました。
1970年代に入ると、これまで生み出された様々な実践モデルに加え、生態学的システム論に基づいた考えが広まり、これまでの実践モデルを統合したジェネラリストアプローチなどが台頭し、これまで主流であった「医療モデル」から「ライフモデル」へ変遷しています。
1980年代になると、イギリスのコミュニティケア政策の影響から、個人と家族、地域の社会関係を再編するソーシャルサポートネットワーク論が着目されました。
1990年代にはいると、これまでソーシャルワーカーの養成の基本と知れたジェネラリストソーシャルワークでは、様々な実践モデルを局面に合わせて適応することに終始され、支援者の専門的知識に基づいての問題解決を行うことからクライエントの無力化につながると批判された。この批判から当事者のストレングスや当事者自身の主体性に着目した、ナラティブ・アプローチ、ストレングスモデル、エンパワメントアプローチが新潮流として発展しました。
このように、多くの実践モデルは時代の要請を受け発展して来ていました。
しかし、過去にうみだされた実践モデルが劣っているということではありません。医学モデルでも、社会モデルも一つの視点であり、状態によって使い分けたり、一体的に実践することも想定されます!
実践モデルの近年の潮流
現代においては、相談援助として対面する生活は、極めて多様になっています。このような多様な生活に対する実践においては、これまで提唱された実践モデルを局面に合わせて実践する、あるいは組わせるなど臨機応変に対応していくことが求められます。
つまり、相談援助の基盤として、一般に価値倫理、知識、技法などの習得が専門性獲得の条件であるとされていますが、相談援助を実践する上では多様な生活に臨機応変に対応していくために、これまでの時代の要請によって生まれた実践モデルを学習し、実践に備える必要があると考えられます。
ただし、ジェネラリストアプローチの批判に合った通り、支援者の専門的知識に基づいての問題解決を行うことはさけ、クライエントをシステムに順応させるのではなく、ソーシャルワーカーはクライエントの自己実現、主体的な生き方を擁護する立場から支援を構築し、実践モデルについてはあくまで技法として用いる必要があると考えられます。
このように、相談援助における実践モデルとは多様化する生活に相対するソーシャルワーカーにとって、学ぶべき技法であると言えるでしょう!
それでは、これ以降は実践モデルのご紹介に移ります!
内容が間違っていたら謝ります。ごめんなさい。
近年のソーシャルワークの基礎なった概念
心理社会的アプローチ
ホリスを中心に、診断学派の伝統的な考えをまとめて再構成したものです。
我が国では残念ながら研究が深まったものではありませんが、私としては基本的なケースワークにおける援助姿勢を示しているものであると思っています。
ホリスの援助の視点では、クライエント個人ではなく、「人」と「状況」と「その両者の相互作用」などの「状況の中の人」というシステムに対するアプローチとなります。つまり、心理社会的アプローチでは人にも環境にも変化を生じさせ、良い相互作用を引き出すことになります。また、人に対する援助としてはクライエントが自分の置かれている状況をクライエント自身が理解できるようになることを重要視します。
そのため、心理社会的アプローチに示している基本的な援助姿勢は、クライエント自身が自分の持つ問題に向き合えるように、ワーカーは傾聴、共感的理解、受容励ましなどであり、これを用い、クライエント自身があるがままの自分の姿を直視できるように支持していきます。
このような援助姿勢や、クライエントシステムへのアプローチは近年のケースワークにおいても重要と言えるでしょう!
機能的アプローチ
機能的アプローチは、1930年代にタフト(Taft、 J.)とロビンソン(Robinson、 V.)によって、ランク(Rank、 O.)の意志心理学(will psychology)の考え方を基盤として確立、発展しました。その後、1960年代にスモーリー(Smalley、 R.)が継承、ソーシャルワーク機関の機能を重視する方法論として体系化された概念です。
利用者は潜在的な可能性を持つ存在であり、自らの意志によって解決の方向性を見いだせるように、利用者の問題やニーズに対する自覚を助けるという考え方です。
問題解決アプローチ
問題解決アプローチは、1950年代にパールマン(Perlman、 H.H.)によって体系化されました。このアプローチは、自我心理学、学習理論、役割理論を基盤としており、診断主義の立場に立ちつつ機能主義の特質を取り入れています。
問題解決アプローチは、特定の生活問題や課題をターゲットとした対象領域を想定していません。むしろ自分自身の問題解決過程に対して、援助を活用しようとする動機づけのある個人に対して有効な方法です。
問題解決アプローチでは、個別支援を支援者と利用者のかかわりの中で行われる「問題解決過程」と考え、利用者の自我機能を高め、問題を対処可能なものに切り分けて考え、利用者の動機づけや能力を助け、さまざまな機会を活用することで自らが主体的に問題を解決できるように支援してきます。
課題中心アプローチ
課題中心アプローチは公的機関の支援対象となる低所得者等への実践をもとに構築された意図的な短期処遇アプローチです。
対象としては心理的問題ではなくより具体的な問題解決を求める利用者層となります。
支援者は利用者と標的となる問題を定め、その解決に必要な対応である課題を明確にします。課題を遂行し、利用者が満足すれば支援は終了することになります。さらに利用者が解決したい問題が有れば、再度支援プロセスが開始されるという支援展開となります。
危機介入アプローチ
危機介入アプローチは危機的な出来事に直面した事例の研究をもとにして予防精神医学として発展してきています。
適用範囲としては様々な要因によって引き起こされる生命や身体あるいは精神が阻害され危機介入が必要な場合です。
危機的状況に対する緊急対応的な性格が強く、支援が継続する場合は他のアプローチに切り替えていく必要があります。
支援展開としては、危機の解消が第一義的な目的となるため、必要な対応が並行して短期間に行われることになるでしょう。
バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチは、複雑に絡み合った問題を抱える個人あるいは世帯に有効です。
バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチとは、精神科医であるエンゲルが提唱し「生物・心理・社会モデル」とも呼ばれています。
バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチにおいて、有効と考えられる支援対象者は複雑に絡み合った問題を抱える個人あるいは世帯であり、高齢障害児童医療困窮など福祉分野が横断的に連携をとって支援体制を組む必要がある場合に有効であると考えられます。
人間は生物的側面・心理的側面・社会的側面が相互に影響して成り立っているという考えに基づき、疾病や不適応などの問題においても、これら3つの側面の相互作用として現れていると捉えます。
そのため、クライエントの問題に対してひとつの側面だけでなく、生物的・心理的・社会的観点から多面的にアセスメントや介入を行おうとするモデルであります。
生物的側面では細胞や遺伝、神経、細菌などが問題の要因となり医師や看護師、薬剤師などが、手術や薬物治療、リハビリなどのアプローチを行います。
心理的側面では認知や信念、感情、ストレスなどが問題の要因となり、臨床心理士や公認心理師などによって、心理療法や心理教育などのアプローチを行うことになります。
社会的側面では社会的ネットワーク(家族、地域)や経済状況、人種や文化などが要因となり、社会福祉士や児童福祉司などが、家族のサポートや福祉サービスの提供など社会福祉的なアプローチを行います。
このように、バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチでは、生物・心理・社会のフレームで問題を整理していくと、様々な要因が絡み合って生じる場合も多いことが分かり、各側面の専門家が協力しながら問題を解決していこうとする多職種連携のモデルとされており、近年でも重要視されています。
複数の専門家がそれぞれの専門性を活かし、協働しながら問題解決にあたることで、相乗効果が生まれ、クライエントにより利益をもたらすことが期待されます。
バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチにおいて、有効と考えられる支援対象者は複雑に絡み合った問題を抱える個人あるいは世帯であり、高齢障害児童医療困窮など福祉分野が横断的に連携をとって支援体制を組む必要がある場合に有効であると考えられます。
参考文献は、飯島慶郎 著(2015)『全人的医療とは何か: 対人援助のための「生物・心理・社会モデル」』Kindle版
行動変容アプローチとは問題に対して無関心であり、継続的な取り組みがニーズとして存在するケースに有効です。
行動変容アプローチはトーマスが提唱し、クライエントの問題行動の原因や動機にさかのぼることをせず、問題行動そのものを取り上げて、特定の問題行動の変容を目標に働きかけるモデルです。
目的は問題行動それ自体の解消、修正であって、問題行動の原因や動機を解消、修正することや、クライエントの意識や思考の変容は直接の目的とはしません。
変容が必要な問題行動に対して、スキナーの学習理論やオペラント条件付けによる強化によって適応行動を増やしていくことになります。
バンデューラが提唱した社会的学習理論(モデリング理論)も行動変容アプローチに取り入れられています。
行動変容アプローチを効果的に実施するには、行動変容ステージを理解する必要があります。「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「維持期」の5つのステージに分かれており、アプローチ方法はステージにより変わります。
「無関心期」では、問題に対して興味関心がない状態を指します。リスクに対しても気づけていない場合が多く、なぜ行動をしなければならないのかを理解できていません。そのため、無関心期への働きかけは気づきを与えることがメインになり、現状を共有しメリットを具体的に伝えることでモチベーションを育てるアプローチが有効です。
関心期では、何かがきっかけとなり、今は行動していないが、健康リスクを把握し、近い将来行動を変えたい時期であり、無関心期への働きかけと同様に、気づき・動機付けを継続することが重要です。
準備期は、実行に向けて準備している段階を指し、実行に向けての具体的な行動の方法の選択と自己決定ができるように促すことがポイントである。実行期は、行動を始めているが習慣化はしておらず、続かなくなる可能性がある時期であります。
維持期は新しい生活習慣として定着してきており、健康行動が継続できている状態を指します。
実行期~維持期では、どのように実行するか、継続するかに焦点をあてて考え、行動変容することのメリットを感じ始めている一方、ストレスも感じているはずです。そのため、行動変容の流れは、常に「無関心期」から「維持期」に進むとは限らず、行動変容する前のステージに戻ってしまう「逆戻り」という現象も起こり得ます。これを防止するためには、小さな成功体験を積み上げていくことが重要であると考えられます。
このように、行動変容アプローチは問題に対して困り感のない「無関心期」からナッジやインセンティブ、ペナルティを活用し具体的行動を起こす「実行期」~「維持期」まで、5つのステージに合わせたアプローチを行うことが特徴であると言えるでしょう。
そのため、有効と考えられる支援対象者は問題に対して無関心であり、継続的な取り組みがニーズとして存在するケースである。例えば、健康増進、禁煙、フレイル予防等、普段の生活の中では問題を感じにくく、継続的に運動、食事の工夫、継続的な受診、検診など定期評価がアプローチとして考えられる健康づくり、保健施策等の相性が良く、このような場合には、非常に有効なアプローチであると考えられます。
ストレングスモデルとは、クライエントのエンパワメントに有効です。
ストレングスとは、利用者が日常生活の中で培ってきた身体的・精神的・社会的能力や強さ、豊かさなどを示し、クライエントの生活支援を重視する概念と言われています。
近年のソーシャルワークではストレングスが支援者とクライエントの対等な関係を構築し、真にクライエントの望む生活を実現する支援展開方式=ストレングス・モデルとして注目されています。
ストレングス・モデルとは、クライエントの能力やクライエントを取り巻く環境の強みを引き出し、活用していくケース・マネジメントです。
ストレングス・モデルでは、クライエントに対して「〇〇ができないから〇〇の支援が必要」と一方的に結論づける姿勢ではなく、「〇〇ができない状況のなかでも対応して生活してきたクライエントのストレングスをどのように生かして支援するか」をクライエントとともに考えていく姿勢が問われているといえるでしょう。
ソーシャルワーク実践において重要なことは、クライエント自身が自らのストレングスを認識して活用し、新たに力を獲得したりするなどして自ら問題を打破していく「本人主体」の考えでもあります。
支援者には、クライエントの自己有用感や肯定感を向上させるために、制度やサービスなどの社会資源をクライエントが主体的に活用できるようにはたらきかけることが常に求められます。
ナラティブアプローチはクライエント自身の気づきによるエンパワメントです
ナラティブアプローチは以前に記事を書いたのでよかったらそちら見てもらえるとうれしいです。
モデルじゃないですけど・・・・重要です
これまで紹介してきた様々な実践モデルですが、肝心なクライエントの対する理解が間違っていたり、不十分だと有効に機能しません。基本的なアセスメントが不十分ですとモデルいくら学んでも何にもならないということですね!。ですので、実践モデルとはまた、違いますが今更ですがICFについてご紹介します!
ICFモデルはアセスメントの枠組みです
ICFとは、2001年5月にWHO総会で採択された生活機能と障害の分類法です。
特徴として、1980年から使われていたWHO国際障害分類(ICIDH)がマイナス面を分類する考え方が中心であったのに対して、ICFはプラス面や環境因子に着目し、健康状態、心身機能・身体構造、活動、参加からクライエントとみていきます。環境因子、個人因子は相互に関係し補完するものです。
ICFは「健康状態」、3つの「生活機能」、2つの「背景因子」の各要素がそれぞれ影響し合って成り立ちます。
「健康状態」とは病気やケガ、体調の変化などを指し、肥満や妊娠、ストレス、加齢なども健康状態の指標として扱う。
「生活機能」はICFの中心的な概念であり、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」から構成されています。
「心身機能」は、身体系の生理的機能及び心理的機能である。手足の動きや、視覚・聴覚、内臓、精神などの機能のことを指します。
「身体構造」は、器官・肢体とその構成部分などの身体の解剖学的部分である。指の関節、胃や腸、皮膚などの構造面のことを指す。
「活動」は、生活上の目的を持った具体的な行為であり、歩くことや日常生活に必要な動作をはじめ、家事や仕事、余暇活動などを含みます。
「参加」は、家庭や社会へ関与し、役割を果たすことです。
「背景因子」とは、生活機能に大きな影響を与える因子のことで、時に生活機能の低下の原因となるものであります。背景因子は、「環境因子」と「個人因子」の2つの因子があります。「環境因子」は、その人を取り巻く人的・物的な環境すべてを指す。「個人因子」は、その人固有の特徴を指す。年齢、性別、民族、生活歴(学歴・職歴・家族歴など)、価値観、ライフスタイルなどがあり、その人の「個性」ともいえる重要な因子です。
最後に
いかがだったでしょうか?普段相談援助を実践されていると、このようなモデルを意識して行うことはまれであると思います。しかし、たまに行き詰った時に思い出し実践モデルにそって振り返ったりしてみると、思わぬ落とし穴に落ちていたことに気づいたり、視点の転換ができたりして「よかったな」と自分で思うこともあります。
ただ、一人でケースを振り返るのは結構しんどい作業なので、誰かに話を聞いてもらいながら行えるといいなと思います。
皆さんは行き詰った時はどうされれていますか?
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