みなさん、こんにちは!
今日は前回に引き続き「身寄りがない人」シリーズです。
支援者の皆さんはこんな方の支援で困ったことはありませんか?
- 判断能力はしっかりしているが、体が動かない、手伝ってくれる親族がいないので「金銭管理」「手続きや書類の処理」に困る
- 常時の支援は必要ない程度には「金銭管理」や「手続き、書類の処理」はできるんだけど、年に数回程度難しいややこしい手続きや書類を処理する必要がって、そこだけサポートが必要
ぼくはめっちゃ困っています。たまに、こういった方の相談をケアマネさんや距離が遠いご親族さんから頂くんですが、どう対応したものか?
その原因は、こういった支援には
「法定後見」「日常生活自立支援事業」が使えない、あまり向いていない。
「任意後見」や「代理委任契約」は経済的なハードルが高い
という、問題が有るからなんです。
そこで今日は、身寄りがない方なんだけど判断能力はまだまだしっかりしてて、後見等制度を使うまでもない!というニッチな方の支援について考えていきたいと思います!
過去の身寄りがないシリーズはこちら
法定後見は「医学的に何らからの精神上の疾患があることで判断能力が低下している」と認められる人でないと使えない!
成年後見制度の内、「法定後見」はお医者さんに「後見用診断書」によって、後見、保佐、補助のどれかの類型に当てはまると判断され、診断書が作成できないと制度利用に至りません。
そのため、判断能力は大丈夫なんだけど、体が動かない、手伝ってくれる親族さんがいないという方は、法定後見の利用は難しいんです。
ただし、この後見、保佐、補助の三つの類型の幅はかなり広く、補助類型なら限定的な支援も制度上可能なので、一度主治医の先生に相談したり、各市町村に設置され、業務の一部として後見制度の利用支援をしている地域包括支援センター、あるいは市町村が設置している後見制度等の利用の相談窓口に問い合わせてみると良いでしょう!
成年後見制度について過去に記事を書いてますのでよかったらご覧ください
日常生活自立支援事業は要相談です
日常生活自立支援事業とは?以下は厚労省HPからの抜粋です
日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものです。
実施主体
- 都道府県・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施)
対象者
- 本事業の対象者は、次のいずれにも該当する方です。
- 判断能力が不十分な方(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方)
- 本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方
援助の内容
- 本事業に基づく援助の内容は、次に掲げるものを基準とします。
- 福祉サービスの利用援助
- 苦情解決制度の利用援助
- 住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等
- 上記に伴う援助の内容は、次に掲げるものを基準とします。
- 預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)
- 定期的な訪問による生活変化の察知
手続きの流れ
- 利用希望者は、実施主体に対して申請(相談)を行います。
- 実施主体は、利用希望者の生活状況や希望する援助内容を確認するとともに、本事業の契約の内容について判断し得る能力の判定を行います。
- 実施主体は、利用希望者が本事業の対象者の要件に該当すると判断した場合には、利用希望者の意向を確認しつつ、援助内容や実施頻度等の具体的な支援を決める「支援計画」を策定し、契約が締結されます。なお、支援計画は、利用者の必要とする援助内容や判断能力の変化等利用者の状況を踏まえ、定期的に見直されます。
- ※契約内容や本人の判断能力等の確認を行う「契約締結審査会」及び適性な運営を確保するための監督を行う第三者的機関である「運営適正化委員会」を設置することにより、契約による事業の信頼性や的確性を高め、利用者が安心して利用できる仕組みとなっています。
利用料実施主体が定める利用料を利用者が負担します。(参考)実施主体が設定している訪問1回あたり利用料 平均1,200円
※本事業の利用に関するご相談等は、お住まいの市町村の社会福祉協議会でお受けしております。ただし、契約締結前の初期相談等に係る経費や生活保護受給世帯の利用料については、無料となっています。
という風になっており、
超簡単に言うと「契約内容を理解できるけど、金銭管理に支援が必要」な方が対象者で、「家賃等固定費を支払ったうえで生活費を自宅まで持ってきてくれる」「書類の処理、福祉サービスなどの契約を手伝ってくれる」が主な支援内容です。
契約であるため、解約したいと思ったら解約することもできます。
ただし、制度の性質上、日々の金銭管理がメインなので「困った時だけ手伝う」「○○だけしてほしい」は難しいかもしれません。この辺は各市町村の社会福祉協議会での運用もちょっとづつ違うかもしれませんので、一度相談してみましょう!
任意後見は費用負担が不安
法定後見もダメ、日常生活自立支援事業の他の制度となると浮かび上がってくるのは「任意後見制度」です。
日本公証人連合会ホームページによると任意後見とは
一般的に後見とは、保護を要する人の後ろ盾となって補佐することをいいますが、法律上の後見は、後見人に財産管理や日常取引の代理等を行ってもらうことによって、保護を必要とする人を守る制度をいいます。
法律上の後見には、法定後見と任意後見があります。法定後見は、裁判所の手続によって後見人が選ばれ、後見が開始する制度です。例えば、未成年者は、通常は、親権者である親が未成年者に代わって財産管理や取引を行って未成年者を保護してやるのですが、親がいない場合には、裁判所が後見人を選任して未成年者を保護します(未成年後見)。また、成人でも、精神障害等によって判断能力が不十分な人については、裁判所が後見人を選任して保護します(成年後見)。これらに対し、保護を必要とする人が、自分の意思(契約)によって後見人を選任するのが任意後見の制度です。つまり、法定後見は、判断能力が既に失われたか又は不十分な状態であるため、自分で後見人等を選ぶことが困難な場合に、裁判所が後見人を選ぶ制度であるのに対し、任意後見は、まだ判断能力がある程度(後見の意味が分かる程度)ある人が、自分で後見人を選ぶ制度なのです。
簡単に言うと、「判断能力が落ちる前に」「自分で後見人や支援内容、報酬を決めて」「公正証書を作っておく」制度です。かなり自由度が高いですね。
ただし、報酬も個人間交渉になりますし弁護士など法律の専門家に頼むと内容にもよりますが、それなりの報酬になります。また、公正証書を作成するので公正証書作成費用も最初に必要となります。
また、気を付けないといけないのは「任意後見人が取り決められた支援内容」を行うのは、判断能力が低下したことが家庭裁判所へ報告され、手続きがされた後からになります。
そのため、任意後見には「代理委任契約」を組み合わせた使い方が一般的です。
日本弁護士連合会では、高齢者を対象とした「ホームロイヤー制度」として、判断能力の低下も含めた「将来の不安」をまとめて相談できる「かかりつけ弁護士」的な事業を展開していくみたいです。
具体的には、任意後見、相続、遺言、代理委任契約による金銭管理等トータルなサポートをまとめてその人の状況に合わせて対応してれるような感じです。ただし、詳細はあれですので詳しくはあれですが、それなりの費用はかかります。
詳しくは日弁連のホームページ等でご確認ください。
いろんな相談先を活用しよう!
色々と考えてみましたが、「ご親族の支援がない」ということが社会的に想定されていないため、なかなか使い勝手の良い便利な制度施策等はありませんでした(私が調べた範囲ではなので、もしいいのがあればぜひ教えてください)
現状では、クライエントの状況によって様々な相談先へ個別に相談していくしかなさそうです。
しかし、後見にしろ、ホームロイヤーにしろ福祉関係の私たちではちょっと門外漢で正しいことがクライエントに情報提供ができないことがあるでしょう。
そんな時は、お住いの市町村の「無料法律相談」等の法律関係の社会資源を紹介するのも一つの手です。市町村によって運用が異なりますが、あらかじめ調べておくと良いでしょう!
また、そういった社会資源がない場合は「法テラス」の利用がいいかもです。「法テラス」では電話相談OKですし、支援関係者からの相談もOKのようです。
最近は、様々ウェブサイトでの相談なども可能なので活用していくいいでしょう!
最後に
いかがだったでしょうか?
個人的には、国で言われているような人口構造の変化による問題が「身寄りがない方の支援」に色々と表れているような気がします。超少子高齢化が今後も進み、世帯員も減少して一人暮らしの方が増える、核家族化しているので親族は遠方というケースや近くに居ても様々な理由で支援が得られない、そもそも本当に身寄りがないという方も増えてくるでしょう。
そんな社会の中で、現状の施策制度では対応できない問題というのも増えてくるのではないでしょうか?
もし、皆さんが本当に困ったケースや対応できない問題に直面した時に助けてくれる仲間や助けてくれそうな人を見つけておくのも大事だと思います!
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