【人間関係にも】ナラティブ・アプローチ【役立つ】

専門職向け

皆さんこんにちは!

皆さんはクライエントと相対するときにどのような態度を心掛けていますか?僕は「何とか信頼関係を作ろう!」「必要な情報を集めよう!」とか、「なにか社会資源につなげないと!!」とか、いろいろ考えて空回りしています。

そんな僕が色々考えて、初回面談や信頼関係構築段階で心掛けている「ナラティブ・アプローチ」について紹介します!

過去の記事で対人援助技術に関する記事を書いてますのでよかったらそちらもご覧下さい

 

「クライエントの解釈を理解する」ことに着目します!

「ナラティブ・アプローチ」とは、クライエントを支援する際に、相手の語る「物語(narrative)」を通して解決法を見出していくアプローチ方法です。

1990年代に臨床心理学の領域から生まれ、現在では医療やソーシャルワークなどの分野でも実践されるようになってきています。

ナラティブ・アプローチの中でも、特に相談者の自主的な語りを重視する実践的な心理療法は「ナラティブ・セラピー」と呼ばれています。

ナラティブ・アプローチが登場する以前にも、カウンセリングなどの心理療法ではクライエントの語る言葉に耳を傾けてきましたが、従来の心理療法では、クライエントの言葉に耳を傾けるのは、あくまでも「クライエントの言葉から、クライエントの客観的な状態を理解するため」でした。

それに対して、ナラティブ・アプローチにおいてクライエントの言葉に耳を傾けるのは、「クライエントの言葉から、クライエントの解釈を理解するため」です。物語はクライエントの解釈と捉えると理解が容易ですね。

解決は共同作業と捉えます

クライエントが自分について語るとき、それは事実とは限りません。クライエントなりの脚色が多く含まれている可能性が高いです。

しかし解釈そのものに着目し、クライエントの解釈を共同作業で新たなものに更新することができたとき、クライエントの状態が大きく改善されるとナラティブ・アプローチでは考えます。

従来のカウンセリングとナラティブ・アプローチとは、「クライエントの語る言葉に耳を傾ける」という意味では同様です。

しかし立ち位置は、「クライエントの客観的な状態に着目するのか」「クライエントの解釈に着目するのか」という意味で、大きく異なるものとなっています。

ナラティブ・アプローチの展開過程

ナラティブ・アプローチの展開過程は以下の通りです。

①ドミナントストーリー(クライエントが思い込んでいる物語)を聞く。

クライエントの語りの多くは自分に対して否定的なものであり、否定感に支配されて(ドミナント)、変えることができないと信じ込んでいる場合があります。

ナラティブ・アプローチでは、ドミナントストーリーをポジティブな物語に置き換えることを目標に、まずはクライエントの話を否定したり、アドバイスをせず聞くことに集中します。予断をまじえずに聞くことで、クライエントの思い込み、こだわりが理解できるのです。

②問題を外在化する。

クライエントから悩みの原因となっている問題を引き離し、クライエントが問題を客観視できるように促します。

問題が内在化しているときは、自分を否定する方向に向かってしまいます。

そこで、問題に対してネーミングすることにより、問題を外在化させることができます。

例えば会社で「なにをやってもダメなんです」と言っている同僚に対して「それはあなたが悪い」と言えば、これは問題を内在化、つまり問題を相手に帰属させていると言えます。

「何をやってダメなんです」と言っている同僚の問題を外在化させようとすると、まずは否定せず予断を交えず聞ききった上で、一緒にネーミングを考えます例えば「問題は悪循環」という風にしてしまって、「問題=悪循環」と意識をすることで、「問題=同僚(自分)」という図式を離れ、問題の影響を客観的に考え、別の見方ができるようになります。

③反省的な質問をする。

クライエントが抱える問題に「誰が、どんな出来事が、どんな経験が」関わっているのかを、クライエントに質問し、一緒に考えます。反省的な質問とは、抱えている問題にどのような人・出来事・経験が関わっているか、という質問です。反省的な質問を投げかけることで、抱えている問題に関する要素を分析します。こうして、抱えている問題に対する感情的な捉え方を取り除いて、解決できる状態にすることを目指します

例えば先ほどの例で「何をしてもダメ」と言っている同僚に対して

・どんな場合でもそうなの? ・どんなことがあったの? ・誰と話すときにダメだと感じるの?など、問題を外在化させたうえであれば一緒に要因を分析することが質問を受けることによって可能になります。

④例外的な結果を見出す。

質問し、クライエントがそれに答える中で、クライエントが思い込んでいるドミナントストーリーから見て「例外的」とも思えることが見つかることがあります。「すべてにおいて間違うわけではない」などを共同作業で発見することが重要です。

⑤オルタナティブストーリーを構築していく。

例外的な結果を起点に、さらに質問を重ね、例外的な結果を補強していきます。このことによってクライエントは自分の物語の新たな側面にクライエント自身が気づくことを促せます。

ここでは、「例外的な結果、そのものがあるからそれでいい」ではなく、例外的な結果から問題の他の側面に気づくことが大切です

例えば先ほどの「何をしてもダメだ」と言っている同僚に対して、反省的な質問を繰り返す中で、「そういえばあの時は相手がほめてくれた」という話があった場合に、さらに「ほめてくれたのはどんなこと?」「その時は何を工夫したの?」など、例外的な結果を補強しつつ「何をしてもダメ」な同僚が、自分で行っていた努力に気づき、さらに例外的な結果が例外にならないように気持ちが向かうことが大事なのです!

ナラティブ・アプローチは「討論」や「説得」ではなく「対話」です。

ナラティブ・アプローチが生まれた背景には、支援者がアドバイスするカウンセリングのあり方に、限界があったためでした。

困難に陥って弱っているクライエントと、情報と知見を持った支援者の間には、大きな力の差があります。そのことを考慮せず、支援者が対応を押し付けることで支援がとん挫することってないですかね?ありますよね!

そのため、ナラティブ・アプローチでは、支援者がクライエントの問題点を指摘せずクライエントの気づきをサポートすることがすごく重要なポイントです!

ナラティブ・アプローチはクライエント自身の気づきによるエンパワメント

このようなことから、ナラティブ・アプローチの効果は「クライエントの気づきによるエンパワメント」であると言えると思っています。

「討論」や「説得」ではなく、「対話」を重視することで、クライエントの固定観念の慢性化、一面的な思考の視野狭窄に対して有効であると思います。

うまく活用すれば、「反目の解消、集団への適用」などが促進されるのではないかとも思います。

ナラティブ・アプローチには支援される側に「語る力」が必要です。(なので、すべての支援場面で使えるわけではありません)

また、ナラティブアプローチの短所としては「物語」の中でクライエントの解釈を支援者が理解し、例外的な結果に着目することで「必ずしも悪いだけではない」というクライエントの気づきを促すことで、クライエントの前向きなパワーを引き出す支援であることです。

つまり、クライエントの問題が社会システム等クライエントの行動のみでは解決し得ない問題の場合、ナラティブアプローチのみでは問題解決に至らない可能性が高いです。

また、「物語」という語りをベースに支援者は、その物語に対して無知であるというスタンスが必要であるため、ナラティブ・アプローチを成功させるには、支援される側が自分について語るための十分な能力を持っている必要がある。そのため、子どもや知的障害者、認知症患者などの支援については限界があると考えています。

『参考文献』

荒井浩道『ナラティヴ・ソーシャルワーク―“〈支援〉しない支援”の方法』(2014年 新泉社)

最後に

いかがだったでしょうか?

困難に陥っているクライエントを支援するとき、どうしても支援者の「焦り」や「いらだち」から、説得という名の押し付けをしてしまう時があるのではないでしょうか?

そんな時は大概「うまくいかないなー」「クライエントから賛同や同意が取れないなー」となっていると思います。

そういった場合にちょっと自分を振り返って、ナラティブ・アプローチを試してみるとうまくいくこともあるかもしれません。

理論は実践の中で使ってみることが大事だなと思います!

皆さんの実践でも、ぜひ意識して理論を実践に導入してみてください。また、やってみた感想でもなんでもコメントでいただけると嬉しいです。

 

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