【一番大事な】重層的支援体制整備事業①【一つのこと】

専門職向け

 

皆さんこんにちは!

福祉業界では、最近地域共生社会の実現が強調され、手上げ方式ではありますが重層的体制整備事業を始めている市町村の状況がちょっとづつ見えてきました。皆さんの市町村はいかがでしょうか?

この制度の肝は「市町村の既存の体制を活用して」てあるように、地域の実情に合わせて構築する設計の自由度が非常に高いところにあります。つまり、市町の地域課題が明確でありそれに対応する意図があれば、その意図に合わせて制度設計ができるのです。これは、これまでちゃんと包括ケアなどの実践を積み上げてきた市町にとっては福音ですが、そうではない市町では呪いとなるでしょう!

そこで今日は、重層的体制整備事業のおさらいです!

そもそも、地域共生社会とは「助け合うことのできる社会」です

一番大元の概念である地域共生社会ですが、厚労省の定義では

 全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる「地域共生社会」を実現する。このため、支え手側と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、福祉などの地域の公的サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる仕組みを構築する。

「ニッポン一億総活躍プラン」

とあります。

このような概念は、以前記事でご紹介した社会福祉学者、日本社会事業大学名誉教授の大橋謙策さん岡村理論を引継ぎ提唱する

  • Care out the Community,
  • Care in the Community,
  • Care by the Community

という地域と福祉の発展段階説に見ることができます。地域共生社会は最後のCare by the Communityに至ることで構築されると言われています。

また、日本福祉大学原田正樹先生も

ケアリングコミュニティとは、「共に生き、相互に支え合うことのできる地域のことである」とし、それこそが「地域福祉の基礎づくり」であり、その実現のためには、「地域という場の中に、『共に生きる』という価値を大切にし、実際に地域で相互に支え合うという行為が営まれ、必要なシステムが構築されていかなければならない」

原田正樹(2014)「ケアリングコミュニティの構築に向けた地域福祉」

と述べています。

つまり、どのような人種、肌の色、特性、性格、立場など個人を構成する様々なプラスの面もマイナスな面も関係なく、支える、支えれるなどの関係性も取っ払い、地域というフィールドにおいて助けあう関係が必要ですよということですね。

このような「地域共生社会」という政策、理念を具体化するのが社会福祉法106条の3項に規定される「包括的な支援体制の整備」ということになります。

「包括的な支援体制の整備」とは、誰も困らない或いは困っても解決につながることにしようということです

社会福祉法106条の3第1項では、市町村に対し「地域住民等及び支援関係機関による、地域福祉の推進のための相互の協力が円滑に行われ、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制」の整備を努力義務としています。

これは、市町村が住民や支援関係機関の協力を得てということで、既存の体制等に基づいて体制を構築してくださいよ!ということと、地域生活課題を解決することのできる支援がしっかり提供されてくださいよ!という二つの要素が入っています。

つまり、

  1. 体制は市町村が既存の体制(住民の活動や支援関係機関のネットワークのあり方)を把握し、それに合わせて作る
  2. 体制は地域生活課題が解決に向けた機能が必要

ということですね。

地域生活課題にはついては下記でも言及されています

社会福祉法第4条3
地域住民等は、地域福祉の推進に当たつては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題(以下「地域生活課題」という。)を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関(以下「支援関係機関」という。)との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。
つまり、地域生活課題とは?
  1. 福祉、介護、介護予防、保健医療、住まい、就労、教育に関する課題。
  2. 地域社会からの孤立に関する課題。
  3. あらゆる分野に参加する機会の確保の課題

ということができますね!

また、もう一つ既存の体制とか支援関係団体とは具体的には?というところで

社会福祉法改正(第106条の2)2017年改正
社会福祉を目的とする事業を経営する者のうち、次に掲げる事業を行うもの(市町村の委託を受けてこれらの事業を行う者を含む。)は、当該事業を行うに当たり自らがその解決に資する支援を行うことが困難な地域生活課題を把握したときは、当該地域生活課題を抱える地域住民の心身の状況、その置かれている環境その他の事情を勘案し、支援関係機関による支援の必要性を検討するよう努めるとともに、必要があると認めるときは、支援関係機関に対し、当該地域生活課題の解決に資する支援を求めるよう努めなければならない。
一 児童福祉法第六条の三第六項に規定する地域子育て支援拠点事業
又は同法第十条の二に規定する拠点において同条に規定する支援を行
う事業
二 母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)第二十二条第一項に規
定する母子健康包括支援センターを経営する事業
三 介護保険法第百十五条の四十五第二項第一号に掲げる事業
四 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第七
十七条第一項第三号に掲げる事業
五 子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第五十九条第一号に掲げる事業

事業名を調べると

一 地域子育て支援拠点事業
二 母子健康包括支援センター事業
三 介護予防・日常生活支援総合事業、地域支援事業
四 障害者地域生活支援事業
五 地域子ども・子育て支援事業

となります。

この1~5の事業は地域生活課題への対応と、他の事業で対応必要な場合はほったらかしにせずにお互い連携しよう!ということですね

地域共生社会は地域包括ケアシステムの概念を拡大したのです

厚労省 (2017年4月5日衆議院厚生労働委員会)によると
「地域共生社会は地域包括ケアの上位概念である」としています。

「高齢期の支援を地域で包括的に確保する『地域包括ケアシステム』の構築が進められてきたが、この『必要な支援を包括的に提供する』という考え方を、障害のある人、子ども等への支援にも普遍化すること、高齢の親と無職独身の50代の子が同居している世帯(いわゆる『8050』)、介護と育児に同時に直面する世帯(いわゆる『ダブルケ
ア』)など、課題が複合化していて、高齢者に対する地域包括ケアシステムだけでは適切な解決策を講じることが難しいケースにも対応できる体制をつくることは、地域共生社会の実現に向けた包括的な支援体制の構築につながっていくものである」

2017年4月5日衆議院厚生労働委員会

もともと、高齢者分野で高齢者の慢性期疾患への対応が必要となり、医療と介護の統合(Integrated care)目指して制度設計されたのが地域包括ケアシステムです。

兵庫県立大学の筒井孝子教授によると、地域包括ケアシステムは二つの独立したコンセプト:Communitybased care(地域を基盤としたケア)とintegrated care(統合型のケア)がある。近年、この二つの方針をケアの中で統合させて組み込もうという議論が世界的に活発化しているとしています。

integrated care
• integrated careには、医療ケアにおける分断の減少や異なる組織のサービス提供の間の継続性や調整を高めるという目的を持つ体制と定義できる。
Community-based care
• Community-based careには、地域の健康上のニーズに応えるという点から運営されるという性質がある。
• さらに、これは地域の特徴、その地域独自の価値観などに合わせて構築することができ、それは、一定レベルの住民による「地域参加」によって保障される。
つまり、地域共生社会は医療と高齢、障害、児童、困窮などの統合された支援体制、地域に住む多様な人のニーズにこたえる形で、地域の特徴や地域独自の価値観などに合わせて構築される。そして、それは、住民の「地域参加」によって保障される。ということになるでしょうか?
このような、体制を包括的支援体制を呼ぶということになるのだと思うのですが、じゃあそれはいったいどういった形で事業化されるのか?それが重層的支援体制整備事業です。

重層的支援体整備事業は、地域づくりと参加支援、相談支援が連動します

社会福祉法106条の3第1項1号から3号では、

  1. 地域住民が自ら暮らす地域の課題を「我が事」として捉えられるような地域づくりの取組
  2. 様々な相談を「丸ごと」受け止める場の整備
  3. 相談機関の協働、ネットワーク体制の整備

について定めています。

これらを踏まえて、住民目線で重層的支援体制を整理すると

  • 総合相談
    相談は分野を問わず丸ごと受け止めてくれる。本困りごとを整理して適切な相談窓口へ繋いでくれる。相談が自らできない人に対してはアウトリーチ(出向く)を丁寧に行う。問題が解決できるように多職種、多機関が協働してくれる。
  • 参加支援
    役割や出番、人間関係をつくることが難しいときは支援がある。→ 生きる意欲、生きる目的がもてる
  • 地域づくり
    地域に住むどんな人でも参加が機会がある地域、排除されず存在が承認される地域である。移り変わることはあっても持続可能な地域社会である
    自分がしたいこと、自己実現ができる、困った人がいても誰一人見捨てられない地域になるための交流・参加・学びをコーディネート機能がある。

という感じでしょうか。このようなプログラムについては更に、地域共生社会の実現に向けた地域福祉の推進について(平成29年12月12日局長通知)では1号から3号について詳細のことが示さています。

1号に関しては、活動参加の促進者の支援、研修の実施

2号には相談を包括的受けとめる場の整備、周知、地域生活課題の早期把握

3号に対して多機関によるチーム支援、多機関のマネジメントなど詳細なプログラム

重層的支援体制整備事業はデザインの自由が特徴です

このような事業に対して、国は市町村を主体としながらも、体制に整備に関しては市町村のこれまでの取り組みや実情に合わせた対応など、市町村ごとにある地域特性や既存の体制に合わせたデザインの自由を許しています。

そのために、国は財政支援についても分野に囚われない総括的な対応を通知し、各分野横断的な対応を促進させるための案分についても提示を行っています。

つまり、市町村は各々の地域特性やこれまでの取り組み、既存の体制に合わせたオーダーメイドの包括的支援体制を構築することを求められていると言えるでしょう。

重層的支援体制整備事業は市町村が地域課題を把握してデザインを描けるかにかかっています。

このようなオーダーメイドの体制整備を達成するためには下記の要素を含む取り組みが必要となると私は考えます。

  1. 住民の身近な圏域や相談支援の包括的な受け止め等を構築するにあたっての住民参加等による住民ニーズの把握
  2. 断らない相談支援においてどのような体制を構築するにしても、一機関や特定のセクションに大きな負担がかからないなどの持続性が担保され、モニタリングができること。
  3. 包括的な相談の場やアウトリーチによって発見される複合した問題を持つ人あるいは世帯に対する庁内、相談機関間の連携を可能とする体制

このような①から③の取り組みが市町村における包括的支援体制を構築するための条件整備となると考えます。

最後に

いかがだったでしょうか?今回は重層的支援体制整備事業について、根拠法や通知、さらに厚労省の資料を参考にしながら示してみました。そのうえで、色々な市町で取り組まれている実践から、これが「肝だね」ということを考えてみたところ、「市町村に根拠のあるデザインが描けるか?」ということが、最大のポイントとなると思いました。

皆さんのお住いの市や町では、どうでしょうか?コメントいただけると嬉しです!

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