【新たな事業】地域共生社会を支える理論④【重層的支援体制整備事業】

専門職向け

皆さんこんにちは!

今回も前回の続きです!このシリーズも早4回目です。

前回の話を踏まえて、今回は重層的支援体制整備事業について、考えていきたいと思います!!

地域共生社会の実現が声高に叫ばれている昨今では、その具体化されたものが重層的支援体制整備事業であることは皆さんご存知かと思います。

しかし、じゃあそれはいったい「どういう風に」「誰が」作っていくのかということについては、厚労省の資料からは「市町村の実情に合わせて」となっており(あくまで、私個人の感想です)あまり、よくわからなかったので、考えてみたいと思います。

今回も、私個人の感想を書きまくるのであまり参考にはならないことをご了承下さい。

重層的支援体制整備事業の背景は変化してきている社会です。

2020年6月、地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律(令和2年法律第52号)が厚生労働省から公布されました。

ここから、市区町村においては、既存の相談支援等の取り組みを活かしつつ、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する重層的支援体制を構築するため、世代や属性を問わないⅠ相談支援、Ⅱ参加支援、Ⅲ地域づくりに向けた支援を実施する事業を創設するということになっています!

重層的支援体制整備事業ができた背景

この事業の創設は、これまでの福祉制度・政策と、人びとの生活そのものや生活を送る中で直面する困難・生きづらさの多様性・複雑性から表れる支援ニーズとの間にギャップが生じてきたことを背景としています。

日本の社会保障は、人生において典型的と考えられる課題の解決を目指すという、基本的なアプローチの下で発展してきました。このため、日本の福祉制度・政策は、子ども・障がい者・高齢者といった対象者の属性や要介護・虐待・生活困窮といったリスクごとに制度を設け、現金・現物給付の提供や専門的支援体制の構築を進めることで、その内容は、質量ともに充実してきました。

一方で、人びとのニーズに目を向ければ、例えば、社会的孤立をはじめとして、生きる上での困難・生きづらさはあるが既存の制度の対象となりにくいケースや、いわゆる「8050」やダブルケアなど個人・世帯が複数の生活上の課題を抱えており、課題ごとの対応に加えてこれらの課題全体を捉えて関わっていくことが必要なケースなどが明らかとなっています。

このような困難・生きづらさの多様性や複雑性は、以前も存在していました。しかし、かつては、血縁・地縁・社縁などの共同体の機能がこれを受け止め、また、安定した雇用等による生活保障が強かった時点では、福祉政策においても強く意識されてこなかったのだと考えられます。

しかし、かつて日本社会を特徴づけていた「家制度」など家族の在り方や、地域社会のあり方が変わり、それに伴って国民生活も変化する中で、様々な問題が支援ニーズとして表れてきています。そして、これまでの福祉政策が整備してきた、子ども・障がい者・高齢者・生活困窮者といった対象者ごとの支援体制だけでは、人びとが持つ様々なニーズへの対応が困難になっていると言えるでしょう。(とはいえ、何とか現場の方の努力と連携で何としていると現状ではありますが・・・・)

地域包括ケアシステムと重層的支援体制整備事業

厚労省によると、制度・分野の枠や、「支える側」「支えられる側」という従来の関係を超えて、人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいや役割を持ち、助け合いながら暮らしていくことのできる、包摂的なコミュニティ、地域や社会を創っていくことがこれからの社会に必要とされています。

では、重層的支援体制整備事業が具体化されるまで執拗に示されて続けてきた地域包括ケアシステムとは何が違うのでしょうか?

地域包括ケアから重層的支援体制へ移り変わる経緯

多分「平成27年9月「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討PT」報告」の中で示された「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」が、最初に重層的支援体制整備事業の大本ではないかと思います。

内容は以下です

  • 新しい地域包括支援体制(全世代・全対象型地域包括支援)

”高齢者に対する地域包括ケアシステムや生活困窮者に対する自立支援制度といった包括的な支援システムを、制度ごとではなく地域というフィールド上に、高齢者や生活困窮者以外に拡げる”

  • 地域の実情に見合った総合的なサービス提供体制

“住民を含む多様な主体の参加に基づく「支え合い」を醸成“” 地域のことを自ら守るために行動し、助け合いを強めていく住民・関係者と、包括的なシステムの構築に創造的に取り組む行政とが協働する“

などの内容が出ており、ここが起点になって最終的に重層的支援体制事業へ至ったのではないかと思います。

この後、具体的には、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成 29 年法律第 52 号。以下「改正法」という。)による社会福祉法(昭和 26年法律第 45 号)の一部改正により、包括的な支援体制を整備することが市町村の努力義務とされました。(平成 30 年4月1日施行)

これにより、市町村においては地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制構築事業(モデル事業)も活用しながら、包括的な支援体制の整備を進めることになっています。

また、令和元年5月から 12 月にかけて、有識者による「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」(地域共生社会推進検討会)を開催され、12 月 26 日に最終とりまとめがなされています。

最終とりまとめでは、地域住民の複合化・複雑化した支援ニーズに対応する市町村における包括的な支援体制の構築を推進するために、以下の3つの支援を内容とする新たな事業の創設を行うべきであるとされました。

これが重層的支援体制が初めて具体的に示されたタイミングですね!

この三つの事業の大本が地域包括ケアシステムも内包したものであり、市町村の既存の事業に従来から構築されてきた、地域包括ケアシステムも含まれていると考えられます。

次からは、重層的支援体制事業の内容についてみていきましょー

重層的支援体制整備事業の内容

Ⅰ相談支援

相談支援については、下記の三つの事業を主に複合、あるいは連携して行うことになるような気がします。(これは市町村の考え方次第なので必ずしもというわけではありません。あくまで私の感覚です)

包括的相談支援事業(社会福祉法第106条の4第2項第1号k)

  • 属性や世代を問わず包括的に相談を受け止める
  • 支援機関のネットワークで対応する
  • 複雑化・複合化した課題については適切に多機関協働事業につなぐ

アウトリーチ等を通じた継続的支援事業(社会福祉法第106条の4第2項第4号)

  • 支援が届いていない人に支援を届ける
  • 会議や関係機関とのネットワークの中から潜在的な相談者を見付ける
  • 本人との信頼関係の構築に向けた支援に力点を置く

多機関協働事業(社会福祉法第106条の4第2項第5号)

  • 市町村全体で包括的な相談支援体制を構築する
  • 重層的支援体制整備事業の中核を担う役割を果たす
  • 支援関係機関の役割分担を図る

イメージですが、包括的相談支援事業として世代分野を問わない相談を受けることや、アウトリーチ事業として積極的にネットワーク構築から発見していくことが基本で、その後、たくさんの機関で関わることになる場合は、多機関協働事業として関係機関間の連携のとりまとめをする感じでしょうか?

このような体制として想定できるのが、二通りあります。

①既存の相談窓口、専門相談機関などが自分の専門分野以外の相談が来てもある程度受け付ける、もしくは適切な機関を案内するなど、分散しているけども連携して結果的に属性や世代を問わない相談を市全体として受け止める体制

②もう一つが、ある程度属性や世代を問わない相談窓口を設置(あるいは既存の機関等に追加)して市民に周知する方法

三つの事業についてそれぞれ、①みたいなグリッド型、②のような機能集中型のどっちがいいのか、あるいはその中間など市町村の状況に応じて判断して設置する必要があります。

②の方が、住民の皆さんへは分かりやすくアピール力が強いというメリットがありますが、属性世代を問わない相談を受ける機関には非常に高いアセスメント力や幅広い知識が必要になってきます。また、受け付けた相談を適切に対応するためには、相談機関間のネットワークの構築が不可欠であり、不十分だと、連携がうまくいかず結果的に困りごとの解決ができない、あるいは遅くなる、無駄な労力がかかるなどして住民に迷惑になるという結果を招きかねないでしょう!

一方で、①の場合においては連携のルールの整備等が無いと、ワンストップにならず、結果的に属性世代を問わない相談支援が行えず、事業を行う意味そのものがないという状態に陥るでしょう!なので、ここでも相談機関間のネットワークが非常に重要と言えるでしょう!

①と②どちらかしか方法がないというわけでありませんが、大枠ではこのような方法に大別できるとは思います。細部は市町村ごとに体制が全然違ったり、地域特性、これまでの取り組みなどによって変わってくるので、もしご自身の市町村で重層的支援体制整備事業を行われるのであれば、一回「重層的の相談支援ってどうやって構築するんですか?」と聞いてみましょう!

Ⅱ.参加支援

参加支援事業(社会福祉法第106条の4第2項第2号)

  • 社会とのつながりを作るための支援を行う
  • 利用者のニーズを踏まえた丁寧なマッチングやメニューをつくる
  • 本人への定着支援と受け入れ先の支援を行う

などが内容とされています。

その対象者は

既存の各制度における社会参加に向けた支援では対応できない個別性の高いニーズを有している人などで、具体的には

  • 8050世帯の50代の者など、世帯全体としては経済的困窮の状態にないが、子がひきこもりの状態である世帯
  • 障害者総合支援法に基づくサービスの支援対象とならないひきこもり状態の者精神的に不調があり、社会にでることに不安がある者
  • 親や家族に頼れず、児童福祉法の対象にもならない10代後半から20代の若者 など

など、既存の制度施策ではカバーされていないけども、社会的孤立状態にあると思われる方が想定されています。

一番具体的に示されていないのが、この事業であるように感じます!

Ⅲ.地域づくり

地域づくり支援事業

どんなことをするのか?私なりにまとめてみました

〇多世代、属性を問わない「居場所」の整理、創設を住民と共に行う
・ 世代や属性を超えて、すべての住民が交流できる場や居場所の構築。先ほどの「参加支援」の受け皿を作るということも含みます。
・ 地域のカフェやフリースペースなどの民間の経営主体や福祉以外の分野で
実施されている取組み(小さな拠点、空き家再生等推進事業など)との連携
により、既存の場が持つ役割を拡張するといった方法も考えられます。

〇マッチング、コーディネイト
・ 「人と人」、「人と資源」、「資源と資源」をつなぐことによって、新たな活動や既存の活動の補強、繋がりによる多様な活動が生み出されるように促す。
・ 地域で取り組まれている事業や活動などが、同じ目標のため集まり、対話の中から新たな気づきや展開が生まれる「場(プラットフォーム)」づくり
・ 「場」とは、拠点だけでなくイベント等のきっかけづくりなど様々な形態が考えられる。
・ 福祉以外の分野の、既存の地域活動におけるコーディネーター的な役割を
担う人材との連携を行うことも、同じ「地域づくり」という観点からは重要

※プラットフォームは地域づくりのプロセスの活性化や発展のため、分野・領域を超えた地域の多様な主体が出会い、つながりの中から更なる展開を生む機会。狙いは、地域の多様な主体が情報交換・協議をすることができる機会を設定することにより、地域の様々な資源がつながり、活動の継続や発展を促すこと。

まとめてみると、すごく目新しい内容というわけでなく、もともと福祉コミュニティを目指して地域福祉の推進を行ってきた社協の活動や一部生活支援体制整備事業ともリンクするものだと思いました。

誰が、重層的支援体制整備事業を担うのか?

今の時点では手上げ方式で手を挙げた市町村のみで実施されることになります。当然、手を挙げた市町村が責任を負いますが、委託可能なのでどこかに委託した場合は、委託先が実務を担うのでしょう

ただし、厚労省の計画では「既存の体制を活用して」となっておりますので、重層的支援体制整備事業の構築方法やデザインはかなり市町村のこれまで取り組みに依存するはずです。

もちろん、地域包括ケアシステムもこの既存の体制の一部になるので、地域包括ケアシステムの構築を担う、地域包括支援センターも関与することは確実です。

重層的支援体制事業をどのように作るのか?ネットワーク構築が重要です!

相談支援については、地域包括だけではなく世代分野を超えた相談支援になるのですべての福祉分野の相談支援を担う部署、機関でのネットワーク形成が事業の成功のカギを握っていると言えます。

また、参加支援や地域づくりの面で社会福祉協議会、生活支援コーディネーターも大きく関与するものであると想像でき、ここでも全ての福祉分野以外とのまちづくり機関との連携、ネットワーク構築が課題となります。

どこに委託するのか、直営で行うかは市町村の考え次第ですが、既存の体制には市町村の窓口、相談機関等も入りますので、庁内での調整や連携が不可欠であるため、市町村の役割は大きいと言えます。

つまり、重層的支援体制整備事業が委託される場合は、委託元の市町村の所管課、委託先の機関のパートナーシップ、役割分担が命運を分けるといっても過言ではありません。

最後に

いかがだったでしょうか?

今回も私見をたくさん書いており、私自身もまとまっているは思いません。しかし、制度の設計からみて「既存の体制を利用して」ということから、必然的に機関間のネットワーク、既存の取り組み同士のネットワークが重層的支援体制整備事業においては重要なパースであるとことは、書いているうちに思いました。

ただし、この事業は市町村の状況やこれまでの取り組みによって大きな差がでるものであることも明白です。

皆さんのお住いの市町村ではどんな感じでしょうか?

コメントなどでご意見、ご感想いただけますとうれしいです!

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