皆さんこんにちは!
今回は「地域を基盤としたソーシャルワーク」です
ソーシャルワークの発展過程にはケースワーク、グループワーク、コミュニティワークと技法ごとに対象を分けて考えていた時代から、徐々に人と環境の相関に着目するようになり、技法的にもジェネラリストソーシャルワークに代表されるように統合的な考え方に移り変わってきています。
対象、場面に限定した技法や考え方は全くダメということではなく、クライエントのライフステージ、置かれている環境、ニーズのあり方によって様々な理論や技法を駆使するという感じの考え方になるかなーと思います。
つまりは、人は誰しも個人ではありますが、家族、地域などと関わりながら生活しているという視座をもって、ジェネラリストソーシャルワークを中心に日本的な実践に沿って考えられたのが、「地域を基盤としたソーシャルワーク」となります。
「地域を基盤としたソーシャルワーク」では、個と地域の一体的支援という特徴というか、考えがありますのでこの辺を中心にご紹介ができればなと思っています!
他にも色々と書いてますのでよかったら読んでください!
よくわかる地域アセスメント【流れで解説】 (swhiro.blog)
コミュニティソーシャルワークの整理
これまでも、コミュニティソーシャルワークに関する理論等をご紹介してきていますが、少し整理しときたいと思います!
コミュニティ・ソーシャルワーク(理念であり実践思想)
- ローカルサービスへのアクセスと効率性をより高めることを意識しつつ、個々のサービス利用者のニーズを丁寧に満たす方法を模索する
地域を基盤としたソーシャルワーク(SWの概念)
- 利用者を中心に地域住民との関わりを志向したソーシャルワーク
コミュニティーワーク(ソーシャルワーク技術の一つ)
- 社会的正義や社会的不平等に関わる問題に対して、地域住民を組織化し、 その解決を図っていく
ジェネラリスト・ソーシャルワーク(CSWで使われる技術)
- 社会福祉援助技術すべてを動員して利用者中心のエンパワメントを支援
地域を基盤としたソーシャルワークは個への支援と個を支える地域づくりを一体的に行います
岩間伸之さんが提唱
定義としては
地域を基盤としたソーシャルワークとは、ジェネラリスト・ソーシャルワークを基礎理論とし、地域で展開する総合相談を実践概念とする個を支える援助と個を支える地域を作る援助を一体的に推進することを基調とした実践理論の体系である。岩間伸之(2011)「地域を基盤としたソーシャルワークの特質と機能」ソーシャルワーク研究vol.37No.1 P4~19 より引用
図にするとこんな感じです。
ちなみに、ジェネラリストソーシャルワークはこんな感じです
- ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークの統合化を経て、ソーシャルワークとして完全に統合
- システム理論、エコシステムなどが背景
- 大きさの異なる各システム(個人、グループ、組織、地域等)に関する特性をおさえたうえで、っ複数のシステム間の交互作用を促進される実践的視座がある
- 個と地域の一体的支援を志向
地域を基盤としたソーシャルワーク二つの理念
クライエントが中心、社会モデル的思考
- クライエントを中心に置き、既存のサービスや制度にクライエントが合わせるのではなく、クライエントにサービスや制度が合わせていくという考えを徹底する
クライエントを中心にした、地域の援助システムを作る
- クライエントを中心に据えた援助システムに地域住民等のインフォ―マルサポート積極的に参画する。地域を基盤とすることは、専門職のみならず、近隣住民やボランティア、NPO等によるサポートと協働するという視点が重要となる。これが「個を地域で支える援助」で、地域が個を支える経験を積むことで「福祉コミュニティ:地域づくり」へ至り地域福祉の推進が活性化する
地域を基盤としたソーシャルワークを実践に置き換えると「総合相談」へ
地域包括支援センターの行う総合相談支援事業のみを指すものではありません。
ここでいう総合相談の考え方としては、分野を問わない相談支援体制を指します
分野対象縦割りの現在の相談支援体制では、零れ落ちてしまう
従来のソーシャルワークで実践では、クライエントが生活圏域を離れ、専門分化された相談機関に赴き、そこで特定の問題について必要な援助を受けるという形であり、専門分化した相談機関をクライエントが選択して活用する構造となっていますねー(‘ω’)ノ
そのため、各相談機関では自分の機関(組織、立場)に合致する特定の課題や問題に焦点が当たることになります
この発想は、細分化された機関の機能にクライエントが合わせていることになります。
これでは、ちょっと生活課題をあって、まだなお、自分で相談機関へ行くことになって大変じゃないですか!
さらに、専門特化しているので相談しに行った機関のメインターゲットから外れた生活課題は、また他の相談機関に行かないといけないし、メインターゲットの違う相談機関同士の連携などが必要となった場合にどうするのかとか、色々あって非常に不親切ではないでしょうか?
自分でこういった相談機関に赴くという力を持っていない人には一体どうしろというのだろうか?ということになります。
分野や対象を横串にした相談支援体制が必要です!
ここをコミットしていくのが、地域を基盤としたソーシャルワークの指し示すところの「総合相談」ということになります。
- 地域を基盤としたソーシャルワークではクライエントを起点するため、相談機関ではなく、クライエントの生活の場で援助を展開します。
- 生活課題に合わせて様々な専門職、機関が地域へ出向き、その地域あるいは世帯なども含めた環境因子に合わせた支援をを統合的に展開することなる。
- そのため相談機関はメインターゲットではなかっても「こちらでは無いですね~」ではなく、他の専門職に課題をつなぐということが求められます。
つまりは、純粋なソーシャルワークと何ら変わりない、本人主体の対応を厳密に考えるということが求められている事ですね。専門機関や制度施策の都合に合わせていては、このようなソーシャルワークは実現できません!
個と地域の一体的支援
地域を基盤としたソーシャルワークでは、「個と地域の一体的支援」として、個人と環境の交互作用に働きかけることが個別支援と地域支援の接点であると考えられています。
この個と地域の一体的支援とは具体例とはソーシャルサポートネットワークの構築が挙げられます
ソーシャルサポートネットワークはフォーマルとインフォーマルなサポートの統合的な支援体制
ソーシャルサポートネットワークは、「社会生活を快適に過ごす上で生じてしまうさまざまな問題に対して、家族や友人、ボランティアや近隣住民などの福祉分野や介護分野などに対して非専門的な援助者と制度施策など中心としたフォーマルな援助が統合されるネットワーク」を意味します。
つまり、一人のAさんに対して当然ニーズに沿った制度施策等の利用をマネジメントはします。例えば、ヘルパーさんを使ったり、リハビリしたりとか、そういった支援ですね。
一方で、Aさんは一人で生きているわけではなく、Aさんの住まう地域には様々なインフォーマルサポートが存在する可能性があるわけですね。
このへんは生活圏域によって様々なところですが、見守り活動があったり、自主的な体操する集いがあったり、当事者、家族等のセルフヘルプグループや福祉的な活動を行っているボランティアグループなど地域にはがあるかもしれません。
それだけではなく、スーパーや郵便局、銀行など生活に必要なサービスを提供している一般企業の取り組みとして、ちょっと判断能力が低下していたり、なんらかの生きづらさがある人への理解があるだけでも、一つのインフォーマルサポートと言えるかもしれません。
このような様々な社会資源をAさんの生活課題に合わせてマネジメントすることでソーシャルサポートネットワークを構築することが重要であるということです。
こんな感じの専門家だけはなく、地域の人や一般企業等非専門課も巻き込んAさんの支援を構築することそのものが、Aさんを通じて地域に対してダイレクトに支援を必要な人に対する理解を深めることに繋がっていくわけです。
最後に
今回は、地域を基盤としたソーシャルワークをご紹介しました。コミュニティソーシャルワークの概念が個別から地域づくりの一連の流れとして全体を指し示すのであれば、今回の地域を基盤としたソーシャルワークの中でも特にソーシャルサポートネットワークの構築は、そのプロセスの一つであると言えると思います!
このようなソーシャルサポートネットワークの構築に関する実践を繰り返すことで、少しづつ「支援を必要とする人」「生きづらさを抱える人」への理解が深まるのだと考えます。
次回は、このような地域における福祉課題の理解が深まることを基盤とした地域づくりを行うコミュニティワークについてご紹介します。
コメント