皆さんこんにちは!
今日のテーマは成年後見制度です。
近年、少子高齢化による人口構造の変化から、高齢者の世帯員数が減少し、一人暮らしの方が急増している社会となっています。一人暮らしではなくても、同居の家族にも色々と支援の必要性があったり、我々介護や福祉関係者が求める「家族」としての機能を果たすことのできない世帯などが増えてきている状況です。
日々、業務をしていても遠方のご家族から「見守り」や「制度利用」についてのご相談があったりと、家族の支援が得られないのはある意味当然であると思うようにもなってきています。
しかし、先ほど書いたように我々介護や福祉関係者、医療現場ではサービスの利用契約、入院や治療契約や手続き、費用の支払い、緊急時の対応など、様々な「家族しかできないこと」を求めざる得ません。
そのため、このような「家族の支援がない」あるいは「支援が薄い」社会となってきた日本では、その解決の一つである「成年後見制度」のニーズが高まっていると言えます!
もちろん、成年後見制度を使っただけでは、家族が果たす機能をすべて網羅できるわけではありませんが、備えとして知識を持っておくに越したことはありません。
以前にも記事を書いてますので、よかったら見てください
それでは、行きましょー!
成年後見制度は判断能力が低下した方の権利を守るための制度です。
成年後見制度の基本理念としては、「自己決定の尊重」「残存能力の活用」「ノーマライゼーション」があげられます。
一方で、「意思尊重と身上配慮義務」(民法858条)によると成年後見人等が業務を遂行するにあたって、成年被後見人等の意思を尊重するとともに、精神や身体の状態や生活 状況に配慮する必要がある旨規定されており「本人の保護」が重要視されています。
つまり、立法主旨としては、基本理念と「本人の保護」との調和にあると考えられ、成年後見人等は、成年被後見人等の代理人として法律行為を行うなど支援を行う場合に、本人の意思を尊重し、最善の利益を実現するために、その立場を代弁していくものであることを巌に認識する必要があります。
ここから導き出される成年後見人等の倫理として求められるのは、成年被後見人等の自己実現にあたり、成年後見人等としての自らの役割と立場、取るべき態度を常に自制する自己規制と自己覚知と考えらます。
したがって成年後見人等には、被成年後見人等への代理、代弁的な機能と自己決定の尊重などのバランスを考えた対応が必要となってきます。
成年後見制度は「法定後見」と「任意後見」の二種類あります。
成年後見制度は「法定後見」と「任意後見」の二種類にわかれます。
「法定後見」は、すでに判断能力が低下している方が対象で法律に基づいて支援が展開されていく
「任意後見」は、まだ判断能力が低下していない方を対象としており、備えがメインとなります。そのため、判断の力が低下する前に任意後見人となる方や任意後見人に行ってもらう支援などを細かく自分で決めることができます。
法定後見は三種類あります
成年後見制度の内、法定後見には医師の診断を根拠とした補助、保佐、後見の三類型あります。
この類型の判断は、医師が所定の診断書を作成し最終的に家庭裁判所が決定します。
後見類型
後見類型では成年後見人に日用品の購入以外は全ての法律行為について代理権があります。
代理権とは、本人に代わって委任を受けた法律行為等を行うことです。
例えば、預貯金の解約や不動産の売買、相続手続き、福祉サービスの契約等の際は、成年後見人が本人の代理人として手続きが行えます。
つまり、家庭裁判所の監督や許可の下、成年後見人自身が手続きが可能です。
被成年後見人からの委任状等は不要。後述する保佐人や補助人に与えられる同意権は成年後見人には付与されません。その理由は成年後見人には財産管理等についての総合的な代理権が付与されており、そのほかの権限が必要ないからです
3つの類型の中で、一番判断能力が低いとされる「後見相当」では、包括的な代理権が無ければならないほど後見人の業務が生活全般に及ぶということですね。
保佐類型
保佐類型では保佐人に対して成年後見人と違い基本的には代理権が与えられず、民法13条で決められた9つの法律行為について“同意権”が与えられます。
同意権とは保佐人が被保佐人が決めた行為に同意を与えることです。
つまり、被保佐人が保佐人の同意なしで行った手続きは保佐人が取消しをすることができることになります。
なお保佐人は、制度利用開始の申立て後に別途追加で申立てを行うことで、同意権ではなく代理権を持つことができます。この場合は民法13条記載の9つの法律行為についてでも、それ以外の法律行為でも可能です。
また、9つの法律行為以外の法律行為について同意権を付けることができます。
補助人
補助人は民法13条で決められた9つの法律行為のうち一部についてのみ同意権や代理権を与えられることとなり、全ての法律行為に同意権や代理権を付けることができません。
補助人は成年後見制度の3つの類型のうち一番ご本人の判断能力があるケースのため、なるべく本人にできることは本人が行い、特に本人が必要かつ難しい手続きだけ補助人に手伝ってもらおうという考え方となります。。
このように類型によって与えられる権限に違いあるため、開始申立て時の手続きにも違いがでる。大きな違いとしては、後見相当では後見開始の審判を行うのみで包括的な代理権がつくが、保佐相当、補助相当の場合は開始の審判のみでは、自動的には代理権や同意権が付かないため、代理権や同意権を希望する場合はどのような手続きの代理権や同意権を付けたいのかという申立て書類を出すこととなります。
法定後見 三つの類型の違い一覧
補助 | 保佐 | 後見 | |
要件、対象者 | 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者 | 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者 | 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者 |
申し立て権者 | 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等 | 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等 | 本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等 |
開始手続きにおける本人の同意 | 必要 | 不要 | 不要 |
同意見
取消権 |
申立ての範囲内で 家庭裁判所が定め る「特定の事項」 例えば、不動産を 売 買 す る 権 限 な ど。 | 民法13条1項 各 号 所 定 の 行 為。なお、日常 生活に関する行 為は除く。 ※1参照 + 申立ての範囲内 で家庭裁判所が 定める「特定の 事項」 | 日常生活に関す る行為以外の行為。 |
付与の手続き | 補助開始の審判
+ 同意権付与の審判 + 本人の同意 |
保佐開始の審判 なお、「特定の法律行為」については、同意権 付与の審判も必 要 | 後見開始の審判 |
代理権 | 申立ての範囲内で 家庭裁判所が定め る「特定の法律行 為」 | 申立ての範囲内 で家庭裁判所が 定める「特定の 法律行為」 | 財産に関する全ての法律行為 |
付与の手続き | 補助開始の審判
+ 代理権付与の審判 + 本人の同意 |
保佐開始の審判 + 代理権付与の審判 + 本人の同意 | 後見開始の審判 |
責務
身上配慮義務 |
本人の心身の状態 及び生活の状況に 配慮する義務 | ||
制度を利 用した場 合の資格 などの制 限 | 医師、税理士など の 資 格 や 会 社 役 員、公務員などの 地位を失う、選挙 権を失うなど | 医師、税理士など の 資 格 や 会 社 役 員、公務員などの 地位を失う、選挙 権を失うなど | 特になし |
民法13条に記載された保佐人・補助人の同意権や代理権にかかる9つの法律行為の内容
- 貸したお金の返済を受けたり、または、逆にお金を貸し付けたりすること
- 借金をしたり、他人の保証人になること
- 不動産などの重要な財産を取得したり売却したりすること
- 訴訟を起こしたり、取り下げたりすること
- 贈与や和解などをすること
- 相続の承認や相続放棄、遺産分割をしたりすること
- 贈与を受けることを拒否することや、遺贈の放棄をすること、負担付贈与や遺贈を受け取ること
- 建物の新築、改築、増築、修繕を行うこと
- 長期の賃貸借をすること
法定後見のメリットは、必要な人が必ず利用できることです
法定後見は、すでに判断の力が下がってしまった方に必要とされることが想定されているため、申立費用、後見人等への報酬について様々な助成等が存在します。
通常、法定後見を申し立てるためのは下記の費用が必要です。
項目名 | 費用 |
---|---|
申立手数料 | 800円 |
後見登記手数料 | 2,600円 |
連絡用郵便切手 | ~5,000円 |
成年後見用診断書 | 3000円~1万円程度 |
医師の鑑定料(必要な場合のみ) | 10万~20万 |
弁護士・司法書士費用(家族等が自分で申し立て書類をつくるのであれば不要) | 10万~30万 |
上記の申し立て手数料や登記手数料、連絡用郵便切手代に合わせて、申立時に必要な「成年後見用診断書」を医師に書いてもらうための費用は必要ですが、「医師の鑑定料」は家庭裁判所から命令が出た場合のみですし、最後の弁護士、司法書士費用については所得、預貯金額が低ければ法テラスに相談し「民事法律扶助」を利用し、分割あるいは免除できます。
法定後見のデメリット
デメリットとしては、申立から審判までに早くても三か月など時間がかかることです。全く身寄りのない方などは、この期間の支援が困難を極めることがあります(お金の入出金や支払いなど、一般的に介護や福祉関係者にタッチができないことなど)市町村によっては、この間の支援について何らかの対応をしている場合もありますが、できればリスクを見越してご本人の意向もありますが早めの制度利用を考えておくことが重要です。
法定後見の権限の限界
上述したように成年後見人等には、様々な権限が与えられています。
しかし、成年後見人等は、あくまでも成年被後見人等の意思 の尊重に基づいて行動しなければいけませんので、入院や施設への入所、介護、教育、リハビリなどを本人の意思に反して強制することは好ましくありません。
また、成年後見人等の権限の範囲外となっている事項に、一身専属事項 があります。例えば、婚姻、離婚、養子縁組、認知等がこれに含まれます。
これらは、本人の身上に大きな影響を与える事項であるために、本人の意 思のみによってなされるべきものとされており、成年後見人等といえども 権限として与えられていません。
また、成年後見人等が、成年被後見人等の居住の用に供している建物やその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除、または抵当権 の設定その他これに準ずる処分を行うには、家庭裁判所の許可を得なければいけません。
成年被後見人等の居住用不動産の処分には、成年被後見人等の心身の状態及び生活の状況への十分な配慮が求 められるので、成年後見人等が単独で判断することは出来ません。客観的・ 地中立的立場からの判断をするためにも家庭裁判所の許可が必要となるのです。
申し立てる方法
申立人に必要な書類をもって、成年被後見人等の住所地を管轄する家庭裁判所に、申立を行います。
必要な書類としては、主に以下のようなものがあります。
- 申立書 ・診断書(成年後見用)
- 本人の戸籍謄本 など
※事案や財産の内容によって、必要書類の内容は変わってきます。
申立後、裁判所の職員が、申立人、後見人候補者、本人から事情をうかがったり、本人の親族に後見人候補者についての意見を照会します。
また、必要に応じて、家事審判官(裁判官)が事情をたずねること(審 問)もあります。
さらに、本人の判断能力について、鑑定を行うこともあります。鑑定に 際しては、申立人に、鑑定料を納めることを求められることもあります。
上記手続き後、家庭裁判所において、後見等の開始の審判をすると同時 に、最も適当と思われる人を成年後見人等に選任します。後見人候補者と指定したものが必ずしも就任するわけではありません
なお、この審判に、不服がある人は、審判書を受領してから2週間以内に、不服申立て(即時抗告)の手続きを取ることができます。但し、誰を成年後見人に選任するかという家庭裁判所の判断には不服申立てをすることは出来ません。また、後見等の開始の審判がなされますと、家庭裁判所からの嘱託によって、成年後見登記がなされます。
任意後見は転ばぬ先の杖です
上述した法定後見制度と異なる制度として、任意後見制度があります。
その違いは、法定後見制度における成年後見人等は、裁判所が選任するものであるのに対し、任意後見制度における任意後見人は、任意被後見人となる本人が、自由に選任することが出来る点です。
また、代理権の範囲にも差があります。
法定後見制度における成年後見人等の代理権の範囲は、法定で定められており、裁判所の審判によって決定されるが、任意後見制度における任意後見人の代理権の範囲は、本人と任意後見人との間の契約内容によって、選択することが可能です。
また、法定後見制度における成年後見人等に監督人等が選任されることは絶対の条件ではないが、任意後見制度における任意後見人には、任意後見監督人が選任されることが、任意後見契約の効力が生じる要件となっています。
任意後見制度には三つのパターンがあります
任意後見の類型としては、移行型、即効型、将来型があると言われています。なお、これは法律による区分ではなく、その契約形態による類型です。
① 移行型
任意後見契約は、任意代理の委任契約(本人が自ら選んだ任意代理人に 対して、本人を代理して一定の法律行為を行うことを委託する委任契約) です。
具体的には、任意後見人となる方と公正証書で上記の委任契約を結ぶことで成立します。
また、この任意後見の契約は契約終了後に本人の判断能力が低下し、任意後見の開始について家庭裁判所へ申し立てられることによって任意後見監督人が選任された時から契約の効力が発生します。
そこで、「移行型」は本人と任意後見受任者との間で、本人の判断能力低下前については、「財産管理等の事務を委託する旨の委任契約」を締結して財産管理等を委任しておくことで、判断能力低下前の支援を行ってもらいます。
あわせて、本人の判断能力低下後については、本番の任意後見契約の効力を発揮させることで、本人の判断能力低下前の代理人がそのまま判断能力低下後 の任意後見人に移行することが出来ます。
なお、移行型では、財産管理等の委任契約と任意後見契約の2つの契約が必要となりますが、2つの契約を1通の公正証書に記載することもできますし、判断能力低下前の委任契約については、別の契約書を作成するこ ともできます。判断能力低下前の委任契約については、普通の私的な契約書によることもできますし、公正証書とすることも可能です。
②即効型
任意後見制度を利用したいけども、すでに軽度の認知症・知的障害・精神障害等の状態にある方でも、契約締結の時点において、判断能力が不十分でも意思能力を有していれば、任意後見契約を締結することが可能です。
その上で、契約締結後直ちに任意後見受任者や本人の親族の申立てにより、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらえれば、任意後見契約の効力を発生させることができ、契約締結当初から任意後見人による保護が受けられます。
このように、すでに判断能力の不十分な状態にある本人でも法定後見による保護ではなく、任意後見による保護を選択することができます。
このような契約締結の直後に契約の効力を発生させる型の利用形態を即効型と呼びます。
しかし、本人が任意後見契約の内容を理解していることが契約の有効性に必要なことはもちろんです。 したがって、本人が保佐相当程度の判断能力の場合は、判断能力の著しく不十分な状態と思われるので、本人の意思確認及び契約内容の審査については、トラブルの種になりかねないので、特に慎重な取り扱いが必要です。
③将来型
十分な判断能力を有する本人が契約締結の時点では受任者に後見事務の委託をせず、将来自己の判断能力が低下した時点ではじめて任意後見人による保護を受けようとする契約形態です。
この契約形態の場合には、任意後見監督人が選任されるまでの間、本人と任意後見受任者の間には委任関係はありません。 そこで、将来型の場合、最も注意しなければいけないのが、本人の判断能力喪失時の把握です。
本人と任意後見受任者の接触の頻度によっては、 判断能力喪失時の把握することが遅れ、任意後見契約の発効時が遅きに失してしまうことがあります。
将来型を選択する場合には、この点に細心の注意を払い本人との接触方法を定期訪問とするなど、あらかじめ決めておくのが良いと思います。
任意後見を 申し立てる方法
公証人の作成する公正証書によって、本人と本人が自ら選んだ任意後見 人との間で、任意後見契約を締結する必要があります。
任意後見のメリット
任意後見では、法定後見と違い自分が決めた人を任意後見人として指定することができます。(※法定後見は家庭裁判所が決めるので必ずしも希望する人がなれるわけではありません)
また、行ってもらう業務についても細かく取り決めることができるので、今の自分にあったスタイルで判断能力低下後も生活するための支援を受けることができます。
任意後見のデメリット
まず、費用が高額になりがちです。公正証書を作成する費用、移行型即効型では財産管理等の委任契約などにかかる費用を見積もっておく必要があります。一概に○○円ということはできませんが、それなりの費用がかかることは理解しておきましょう
また、契約内容についてはしっかりと考えていないと意味のない契約になってしまう可能性があります。契約内容を計画するところから専門家と相談しつつ進めるをお勧めします。
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